2007年7月27日金曜日

連続実話小説 ジーナ 第1章 第一話

プロローグはこちら



苦しい時、私はジーナとつぶやくことにした。

苦しかった時、ジーナは子どものようにワンワン泣く。
フィリピン人は感情がとても豊かなんだ。 怒るときも、泣くときも、喜ぶときもとても素直に感情を表現する。

ジーナは置引きに会ったとき、友達がイジワルしたとき
うちの家に来て、おいおい泣いた。 
私はどうしていいかわからず、とりあえず家に入れてお茶を出して話を聞いた。
そして、ジーナは泣きながら話て、
「しかたない次へ行こう」と私の家から出て行く。

私は、そんな素直なジーナに本当に久しぶりに感動している。

ジーナは朝は工場で9時から働く。 嫌々働いたりしていない。
来て欲しいと言われたら8時でも、7時でも行く。
夜は社長がいるときは8時まで働くことが多いが、社長がいなくて社長の奥さんだと
わりと早くに6時くらいに終わる。 それはそれでお風呂やさんにゆっくり行けるから嬉しい。

時給1000円。 たかが1000円。 でも、その1000円のために彼女は頑張っている。


夜のスナックも、お客が最近少ないので夜に10時に出て、12時に終わるときもあるし、自分のお客さんが来てくれたときは2時でも3時でも働く。スナックの時給は1500円。

店の中でカツラをかぶり、ドレスに着替えて笑顔と冗談をふりまく。お酒は飲まない。
売り上げのために多少食べるだけ。 でも、お客さんに迷惑になるから、店に自慢できるほどは決して注文しない。
そういうジーナの気遣いが可愛くて、ファンになるお客さんが多いと思う。


でも、誰もそれほどまでに彼女が働いている理由を知らない。
驚くことに夫も知らない。
夫とは夫と共同で毎月貯金している。それとは別にジーナはフィリピンの家族や娘がやっているマンゴー畑の経営のために毎月20万円以上を稼いでいるのだ。


日本人には理解できないと思う。
父親はもちろん、親戚、近所の人にまでお金を配らないといけない事情。
それはカッコつけではない。 本当にフィリピンは仕事がない。
小学生は工場で働かせてもらえるが、給料が高くなるので25歳にもなると退職するように言われる。
だから皆、日本やアメリカに出稼ぎに行きたがる。 でも、ビザの問題でなかなか行けない。
そんなフィリピンに産業が必要で、そのためにもマンゴー畑の事業を成功させたいのだと教えてくれた。

政府がギャングとつるんでいて悪いことばかりしてきた国がフィリピンで、そういう政府の国に生まれてしまったことを全フィリピン人は感じている。 そして一部の人間は誰かに頼ることを考え、悪いことをして儲けることを考える人もいて、そしてジーナのように何とかしなければと考える人がいるのだ。

昨日、ちょっとプログラムを勉強していて(というか、アホなミスが気がつかなくて)深夜4時(朝ですね)に家に帰ったら、ジーナが窓も開けずに扇風機だけかて、まっくらの居間で服のままで、ムンムンした中でまくらだけして寝ていた。

疲れすぎて布団を出すのも、窓を開けるのもめんどくさくて寝たんだろう。


びっくりして、窓を開けて私は電気つけたりして服着替えたりしていたんだけど、まったくジーナは目覚めない。

この前は、風呂から上がって下のズボンだけかろうじてはき、そのまま裸で居間の床で倒れて寝ていたので、びっくりしてシーツをかけてあげたことがある。

そこまで疲れているジーナを見てると私なんか本当に幸せだなと思ってしまうのだ。

そして、そこまで疲れているのに、顔には一切出さずにお客さんのアフターを2時、3時まで付き合ったりもたまにしているのだから、私は頭が下がるのである。

たぶんジーナはそこまでしんどいことをお客さんには一切、言ってないじゃないかなと思う。
夫にもそういうグチを一切言ってない。 というか、夫はそこまで働いていることを知らないし、知らせたくないのだという。 

お弁当とまではいかないが、持ち歩くジュースも買ったりせずにペットボトルに水を入れて持ち歩いているし、冷蔵庫に明日食べるおかずが入っていたりする。 本当に節約して生きているのに、たまに早く帰ったときは私に「ごはん食べに行こう」とおごろうとする。
家を使っているのを悪いと思っているみたいだ。 
この前、給料日に1万円を渡してくれた。 迷ったけれどもらった。
そうした方が、彼女は遠慮なく私の家の風呂や電気を使えると思ったから。
言わなかったら風呂も水だけで髪の毛洗ったりするのである。
「夏だから大丈夫だ」とか言うので。 それはなんぼフィリピン人でもいかんぞと。

もう自分が贅沢に生きていることを神様は戒めてくれているのだなと。
もう、参りましたという感じである。


がんばる。 そこまで頑張る。 

それは本当にすごい。彼女は必ず成功するのだ。
自分の人生の成功はそうやってつかむのだと私は本当に最近感じている。


つづく…

0 コメント: